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結婚式前日の朝

 

明日、私は結婚式を挙げる。

 

花嫁姿|ウエディングドレス

 

結婚式の前々日から、実家に帰ることにした。

こんな日の前日だからこそ、

丸一日家族との時間を過ごしたかった。

久しぶりに入る自分の部屋。

私が家を出てからも殆ど変わりの無い部屋。

小学校に入るときに買ってもらった勉強机。

自分だけの机がとても嬉しかったのを覚えている。

すぐ机の上を汚くして、よく怒られてたな。

中学校の時に引っ越してから

ずっと使っていたベッド。

弟と使っていた2段ベッドを分けたものだ。

普通のベッドを買い直すことも考えたけれど

「寝相が悪くてきっと落ちるから」なんて理由で

柵のついた二段ベッドのままだった。

結婚式前日の朝、懐かしい日差しで目が覚める。

朝が苦手な私は、いい年になってからも

母が部屋のカーテンを開けてくれてから起きていた。

右側からの暖かい日差しを感じるのは久しぶりだ。

眠たい目をこすり、少し冷たいフローリングに足を伸ばす。

元々カーペットが敷いてあったこの部屋に

わがままを言って父にフローリングを敷いてもらったんだっけ。

部屋を出ると少し急な階段だ。

昔寝ぼけて、私がころげ落ちてからは

いつのまにか手すりがついていた。

今日は階段はゆっくり降りて、降り切ると玄関に当たる。

祖母の影響で靴が好きになり

「あんたはムカデか」と言われるほど私の靴が玄関にあふれていた。

今は母により整頓されていてとても綺麗だ。

リビングに入ると真っ先に出迎えてくれるのが

高校生の時からいる愛犬。

いつかこいつも私の顔を忘れてしまうのだろうか。

自分の家でもあるはずなのに

「懐かしさ」を感じることにひどく悲しくなった。

あまりにも思い出がたくさんあって

家族の優しさがつめ込まれた家。

「たまに帰ってきてもいいのかな」

少し暗い気分で、朝の挨拶もそこそこに母に尋ねれば

「まあいいんじゃない」

なんてあっけらかんとした答え。

ちょっと優しい言葉を望んでいた私にとっては

少し期待はずれだった。

母はこう続けた。

「ここはもちろんあんたの家でもあるんだから

帰ってきたいときは 帰ってきたらいいと思う。

結婚したからって、家族じゃなくなるわけじゃないんだから。

正直、前のように家にいたらいいのに、なんて思う時もあるけど

やっぱり私は結婚して幸せだったし

自分の娘にも、新しい自分の家族を大切にしてほしいとも思う。

でも娘はいつになっても娘なんだよねえー

今だってちゃんと食べて、寝てるのかなって思うし

朝ちゃんと起きれてるのかも心配だし。

まー昔はもっと可愛かったんだけどさ、

今も可愛いよ!」

普段滅多に言わないようなちょっと変な言葉でしめて

母はキッチンへ消えていった。

きっと、私が寂しさを感じていることに気づいたのだと思う。

母の言葉に、悲しさがすっと消えたような気がする。

やっぱり、ここは私の家だ。

何年たっても、私が何歳になろうとずっと二人の娘なんだ。

娘の役割に加えて、妻の役割も増えるのだから

きっと寂しさを感じる暇なんて無いだろう。

両親への手紙を読む前に、お返事をもらったような気分だけれど

おかげで明日は思いっきり楽しめそう。

 

お母様と花嫁様|ピエトラセレーナ

 

お母さんも、一緒にね。

 

 

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